【起業家インタビュー】株式会社TRiCERA 代表取締役 井口泰(いぐち たい)さん
- Interview
今回のKUSABI 起業家インタビューゲストは、株式会社TRiCERA 代表取締役 井口泰(いぐち たい)さんです。
アジア最大級のアート作品販売プラットフォームを展開
―事業内容を教えてください。
「創造力に国境なんてない」をビジョンに掲げ、アート作品を取り扱うグローバルマーケットプレイス「TRiCERA ART(トライセラアート)」を運営しています。日本の現代アート作品を海外に向けて販売しています。プロモーションから配送までワンストップでアートを海外に販売できることが特徴です。
サービス開始から3年で、アジア最大級を誇るグローバルアートマーケットプレイスに成長しました。2023年7月現在、8,000名以上のアーティストが登録し、その国籍は126か国以上。絵画・写真・彫刻などアート作品約8万7,000点が購入可能となっています。
また、TRiCERAはアーティストがキャリア形成を行なっていけるようサポートしています。それぞれのアーティストが望んでいる将来像を叶えることが出来るサービスの創出と成長を目指して事業を展開しています。
大企業での経験を活かし、アーティストがきちんとマネタイズできる仕組みを
―起業や事業内容を決めたきっかけは?
中学生の頃まで、俳優を目指して子役として活動していました。子役の世界はとても厳しい競争社会で、様々なことを学んできました。
芸術の世界には「天才」が本当に存在します。ある日、子役として活躍する「天才」に出会ってしまった僕は、人生で初めての挫折を味わいました。その後、俳優への道は諦め、海外留学をした後、事業会社に就職をしました。
社会人として最初に入社した会社では世界を相手に仕事をし、2社目に入社したシーメンスでは、自ら立ち上げたDXプロジェクトがグローバルでベストプラクティスに選ばれたり、直近で働いていたナイキでは部内最年少でマネージャーに昇格するなど、自分なりに社会人としての自信を身につけることが出来ました。
ナイキではグローバル次世代幹部候補に選出され、ポートランドで開催された研修プログラムに参加することになりました。各国からエリートが集まって研修に取り組む中、世界から結集した頭のいい人たちが出すアウトプットが「当たり障りのないもの」であることに違和感を覚え始めました。
研修中のある晩、ナイキ創業者であるフィル・ナイト氏の誕生会に参加した際、創業時に従業員だった人がプログラム参加者に向け、「君たちは会社のことばかりを考えていて視野が狭すぎる。それではイノベーションは起きない。君たちは、誰に何がしたいんだ」と、シンプルですがとても重みのある質問を投げかけ、僕はハッとさせられました。
たまたま同じ時期に、現在ではTRiCERAのトップアーティストであるタケダヒロキ氏と出会い、原画が売れず悩んでいると言っていた状況が重なって、「このアーティストが活動を続けられるよう、きちんとマネタイズできる方法はないだろうか」と真剣に考えるようになりました。
アートの世界はまだまだとても閉鎖的で、アートにつく値段の情報すら出回ることはありません。サラリーマン時代の経験から、サプライチェーンやグローバルの物流インフラさえ整えられれば、アートは大きな可能性が眠っているマ―ケットだと感じ、起業をしてフルベットしていくことを決心しました。
僕はアートや音楽、クリエイティブも好きですが、何より自分の生き方を貫いているアーティストが好きです。アーティストがアーティストでい続けてもらえるために事業を作りたいと考え、そのために必要な手段が「起業」であったし、事業を大きくしていくうえで必要なことが「資金調達」でした。
互いに尊敬しあい、共に成長していける投資家との信頼関係
―KUSABIとの出会いのきっかけや出資を受けた理由を教えてください。
渡邉さんとは、KUSABI創業前から繋がっていました。めちゃくちゃ頭がいい人なのに相手を見下したりせず、何より相手の成長を見ようとしてくれている点が好印象でした。21年にKUSABIを立ち上げた後、数回面談したうえで、KUSABI渡邉さんにリード投資家として入ってもらって一緒に事業を成長させていきたいと思いました。
リード投資家と起業家は互いにリスペクトしているか、互いに成長したいと思っているか、信頼しあっているか、といった部分が非常に大事だと思います。渡邉さんとは付き合いが長いこともありますが、それ以上に信頼でき、共に成長できるパートナーだと思ったのでKUSABIからの出資を受けることにしました。
―KUSABIから出資を受けてよかったことはありますか?
起業家が落ちそうな落とし穴を早期発見してくれるところです。エスパーかなと思うくらいです(笑)経営管理が初体験であることが多い起業家にとって、投資家が数字の状況だけで組織の状態を把握し、適切なアドバイスやインプットをしてくれることで、自分たちの意思決定が早くなることを実感しています。
KUSABIには代表パートナーが3人いて、それぞれの色があって面白いなと思います。元々は「KUSABI=渡邉さん」という印象でしたが、KUSABIの中にも色々なバリエーションがあって以前の印象とは大きく変わりました。投資方針は3人それぞれだと思うので、起業家にとってはどのパートナーに行くかは重要だと思います(笑)渡邉さんはアツい部分と冷静な部分を持ち合わせた稀有な存在で、頭脳明晰、伴走するパートナーとしての考えを常に持っている方です。ロジカルなだけでなく、うちに秘めた思いやパッションがある起業家の方にお薦めのキャピタリストです!
世の中に大きなインパクトを出し続けられる存在でありたい
―今後TRiCERAが目指すことを教えてください。
ゴーイングコンサーンという言葉がある通り、企業の「ゴール」はないと思いますし、続けていくことこそが価値だと考えています。ですが、ただ続けるだけではなく、世の中にインパクトを残せないと意味がない。時価総額数十億〜百億円という規模で留まるのではなく、より大きなインパクトを世の中に与えていきたいです。
たまに「アートは生きていくうえで必要ではない」と言われることもあるのですが、そういう質問に対しては「あなたにとって生きるって何ですか?」と逆に質問したい気持ちになります。テクノロジーの発展が目まぐるしい現代だからこそ、人間が成長するためには「文化」が必要です。文化と経済は世の中の両輪であると言われるように、様々な文化があってそこに経済が誕生するものです。文化は進化、そして変化していくものです。サービスやプロダクトを含んだ新しい経済により、また新しい文化が生まれるのです。
全員がアートを好きになる必要はないですが、「文化」を作って守っていく過程の中で、世の中をより良くしていったり、自分らしく生きることを大切にしていく人たちを大事にしていきたいと考えています。
経営もアーティスト活動も継続することは困難を伴いますが、一番価値のあることだと思っています。TRiCERAが、アーティストの未来に繋がるためのものでありたいですし、自分自身もそんな存在であり続けなくてはいけないと思っています。
―最後に、起業家志望の皆さんに一言お願いします!
やりたかったら、すぐやるのがいいと思います。「準備」というのはやりだしたらきりがないですし、言い訳にもなってしまう。
まずはやってみることが重要だと思います!
井口さん、ありがとうございました!
【会社概要】
代表取締役 井口 泰(いぐち たい)
〒106-0031 東京都港区西麻布4-2-4 The Wall 3F
設立:2018年11月
サービスURL:https://www.tricera.net/ja
事業内容:グローバルアートマーケットプレイスの運営
【採用情報】 https://www.tricera.co.jp/recruit
KUSABI コミュニティマネージャー リヨウの編集後記
子役時代に培われたのか、井口さんの表現力とユーモアのセンスは抜群です・・!インタビューは、始まってから終わるまでずっと笑い声に包まれていて、あっという間の時間でした。
インタビューは軽快な雰囲気で進んだ一方、井口さんのアートに対する情熱的な思いを伺うことができました。アートを含む文化は、私たちのアイデンティティ形成や共感の基盤となります。人々に精神的な安らぎや生きる喜びをもたらし、人生を豊かにする重要な要素です。文化を通じて、私たちは自己を表現し、他者とのつながりを築き、共通の喜びや感動を分かち合うことができます。文化は私たちが生きる上で欠かせないものです。
TRiCERAは、アートを通じてより良い文化を創り出すために、アーティストのキャリア形成にも力を入れています。才能あるアーティストを支援し、彼らの作品をより多くの人々に届けるための素晴らしいプラットフォームを提供しています。実は私もTRiCERAで絵を購入したことがあり、その作品の力にいつも励まされています!これからもTRiCERAを心から応援していきます。この記事を読んでくださった皆さんもぜひ応援をお願いします!
~~~~~
■アクセラレーションプログラム 『KUSABI α(アルファ)』募集中!
ウェブサイト:https://kusabi.fund/accelerator
■資金調達の相談、事業内容の壁打ち、ピボット相談等、気軽にKUSABIキャピタリストと会話ができるKUSABI Office Hourを開催中!
申込Form:https://forms.gle/AqZxpZke3pTDorXS8
~~~~~