愛するペットは、家族だから——「後悔のないペットライフの実現」を目指す、Buddy Cloudの創業物語

  • Interview

大きな夢を持つことに、年齢や性別はおろか、そのほか一切の所与条件は不問である。「世界をもっとよくしたい」という欲求は、80億人の全人類に共通する願いだからだ。

沸き立つ欲求を自らの手で現実にしようと試行錯誤する能力は、アントレプレナーシップとも言い換えられるだろう。これを現在進行形で発揮する人間のことを、私たちは「起業家」と呼ぶ。

連載『起業家の白地図』がフォーカスするのは、シードステージのスタートアップを育成する約18か月間のアクセラレーションプログラム「KUSABI α」を通じ、アントレプレナーシップを発揮する起業家たち。

歴史を刻む一歩を踏み出した起業家たちは、片手に握りしめた白地図をどのように染めていくのか——。トライアンドエラーを繰り返す現在と、やがて掴むであろう理想の未来を、インタビューを通じて紐解いていく。

本記事に登場するのは、愛犬・愛猫の健康管理を可能にする尿検査キット「Buddy Medical Check」を開発する、株式会社Buddy Cloudの藤井峻さんと小佐々大熙さん。

創業の背景には、ペットに対するふたりの愛がある。彼らは「後悔のないペットライフの実現」というビジョンを、いかにして実現していくのか——。

創業に至るエピソードから、ビジョン実現までのロードマップを、インタビューを通じて紐解いていく。

愛するペットのために、データが必要だ

── 愛犬・愛猫の健康管理を可能にする尿検査キット「Buddy Medical Check」は、どのようなサービスなのでしょうか。

小佐々:「Buddy Medical Check」は、自宅にいながらペットの健康状態を把握できる尿検査キットです。尿を付着させた検査用紙をスマホで撮影し、LINE公式アプリにアップロードすることで、その場で検査結果を確認できます。各項目の特徴や疾患のリスクの解説まで実施しているので、人間が気付けなかった些細な変化を捉えられるのが特徴です。

藤井:犬や猫の寿命は年々伸びていますが、体調の変化に気付けず亡くなってしまうケースは少なくありませんし、生活習慣が起因して健康寿命が短くなってしまうということもあります。

私もペットの突然死を経験したひとりです。犬を飼っていたのですが、ある朝に目を覚ますと、けいれんを起こしていました。慌てて救急病院で診断を受けましたが、残念ながら翌日に亡くなってしまいました。

獣医師の先生から「このような行動はありませんでしたか?」と聞かれた際、家族全員がハッと気付かされました。彼はアラートを出していたものの、気付けず放置してしまっていたのです。

ペットを愛する人間にとって、ペットはかけがえのない家族です。私のような後悔をする人が一人でも減ってほしいし、ワンちゃん、ネコちゃんが、一日でも多く幸せな日々を過ごせる未来を願って、サービスを運営しています。

── ペット領域で事業を立ち上げるにあたり、「Buddy Medical Check」を開発するに至ったのには、どのような背景があったのでしょうか。

小佐々:僕が大学院まで盲導犬の遺伝子をテーマに研究をしていたのがルーツです。幼少期は犬の図鑑を愛読書にするほど犬が好きで、興味そのままに研究テーマを決めました。

盲導犬は飼育するのに1年間で300万円程度の費用がかかることもありますが、合格率は3割程度です。そもそも適性がない場合は飼育費がムダになってしまうので、初期段階から適正の有無を判断する方法を研究していました。

つまり、当時の研究を通じて、盲導犬に限らずペットに関するデータが蓄積されにくいことを認知していて、課題を感じていたのです。

当時からずっと、ペットに関するデータを利活用できたら、健康寿命を伸ばせるかもしれないし、より快適な生活を送ることが可能になるのではないかと考えていました。

とはいえ、データを利活用するには、データを集めなければいけません。そこで考案したのが「Buddy Medical Check」です。尿検査を通じてペットの健康管理を行いながら、判定結果を収集してデータを集め、精度高く健康状態を調べられる状態を目指すことにしました。

現在は、さらに高度な検査結果を導くために、自生台の試験紙を慶應義塾大学理工学部との共同研究を進めており、産学連携支援プロジェクトに選定されました。

研究員として感じていた課題と、ペットを愛する気持ちが重なって生まれたサービスが、「Buddy Medical Check」なのです。

最短距離でゴールに迎える、KUSABI αのハンズオン支援

── スタートアップ・エコシステムの成熟に伴い、資金調達の選択肢は年々広がっています。数ある選択肢の中で、「KUSABI α」への参加を決めた理由について教えてください。

藤井:本格的な調達活動を開始する以前に、投資家の方とお話しする機会をいただいたり、アクセラレーションプログラムに参加したりして、事業の構想やビジョン・ミッションなどを固めていました。

それらの活動を通じて大枠の方向性は決まったものの、定量的な観点では成長イメージを描けていないというのが、私たちの課題でした。「足元をいかにして固めていくか」という課題に対して、明確な答えを持っていなかったのです。

この課題を解決していくのに、資金を提供していただけて、さらにはハンズオンで成長を支援していただける「KUSABI α」が、ガッチリとハマっていました。

KUSABIのパートナーである永井さんとお話をしてみたところ、僕らだけでは実現し得ない成長を実現できる可能性も感じられました。事業立ち上げの背景にある想いに共感していただけたこともあり、「KUSABI α」に参加させていただく意思決定をしています。

── 「KUSABI α」からは、資金の提供以外に、どのようなサポートを受けられていますか。

藤井:もっとも価値を感じているのが、定期的なメンタリングです。

起業してから、シードラウンド、シリーズA、シリーズB……とステップを踏んでいくのですが、私たちにはいかにして各ラウンドの壁を越えていけばいいのか、正確な理解がありませんでした。

そもそもの考え方を示していただいただけでなく、壁を越えるために必要な指標をいかにしてクリアしていけばいいのかを指導していただけたのは、起業家として成長できたポイントだったと思います。

佐々小:「Buddy Medical Check」として指標をクリアすることだけを考えていたのですが、それ以外にもできることがある、と思えたのも大きかったです。

Buddy Cloudが目指しているのは、後悔のないペットライフの実現です。健康寿命を伸ばすだけでなく、ペットの生活を向上させていく必要があります。そのためのサービスも同時並行で開発しており、こちらで指標をクリアする方向性もあるという、新しい視点を提供していただきました。

藤井:視点を与えて終わり、ではないのも魅力です。ファイナンスはどのようにして実施すればいいのか、マーケティング戦略はどのように構築すればいいのか、というところまで踏み込んだレクチャーをしていただいています。

各領域のプロフェッショナルが講師を務めてくださり、ゴールに対して最短距離で進めている。そう感じられるのは、「KUSABI α」ならではの魅力だと思います。

ペットのことならBuddy Cloud、と言われる世界を目指して

── 後悔のないペットライフの実現を目指して、「Buddy Medical Check」以外にどのようなサービスを開発しているのでしょうか。

藤井:今後、ペットに関連する複数のソリューション提供を行っていく予定ですが、まずはペットにまつわる総合ECサービスを開発しています。フードやおもちゃに限らず、ハウスや猫砂など、あらゆるペット製品を取り扱う専門モールです。

「Amazonでなんでも手に入るじゃないか」と思われる人もいるでしょうが、世界を見渡すと、ペット製品に関しては専門のモールが台頭しています。あらゆる選択肢から商品を選びたい、適切な使い方をプロに聞きたい、という細やかなニーズを叶えられるからです。

トレーニーたちが、AmazonではなくiHerbでプロテインを購入しているといえば、分かりやすいかもしれません。

日本でもペット製品はすべてAmazonで買える時代ですが、実は商品のレパートリーはそこまで多くないんです。価格も各メーカーが類似・競合商品に鑑みた上で、足並みを揃えてせ設定している場合も多いので、消費者の視点に立つと、実質的に選択肢が限定されています。

売り手と買い手の間に情報の非対称性があるので、多様な選択肢を提示することで、これを解消していく計画です。

もちろんこれは、後悔のないペットライフの実現に直結しています。「Buddy Medical Check」を通じてペットの健康状態を正確に把握できれば、適切な商品を豊富な選択肢から購入できるようになるからです。

── Buddy Cloudは現在、シードラウンドからシリーズAラウンドを目指していると聞きました。次のステージに向け、どのような課題と対峙しているのでしょうか。

藤井:事業構想ができ、プロダクトもローンチできていて、直近はCAC(Customer Acquisition Cost:顧客獲得単価)をいかに下げられるかを課題としています。「Buddy Medical Check」とECモールの循環によって成長していく絵は描けているので、どれだけ多くのユーザーを集められるかが最初の壁です。

若い年代の方はペットに対する“家族思考”が強く、プロダクトの価値を認識していただけさえすれば広がっていくと信じているので、まずはその壁を越えていきたいと思います。

小佐々:数字に対してかなり厳しい目線で対峙しているのですが、これは投資をリードしていただいている永井さんの影響を強く受けています。僕らが描いている世界を理解していただいていますが、そのうえで妄想の世界に旅立つことがないようサポートしてくれているので、結果で期待に応えていきたいです。

藤井:シリーズAまでに磐石な体制をつくり、そこから強烈にアクセルを踏んでいく予定です。日本からは未だ世界を席巻するペットテック企業が誕生していませんが、ペット市場は全世界で成長し続ける巨大産業ですし、特にアジア圏は経済成長にともない急拡大しています。

生活用品を購入したくなったらAmazonにアクセスするように、いずれは「ペットのことならBuddy Cloud」と言われる存在になっていきたいと思っています。

すべては「後悔のないペットライフ」のために

── 最後になりますが、これからBuddy Cloudが実現したい世界について、教えてください。

藤井:繰り返しになってしまいますが、私たちが提供するサービスはすべて、後悔のないペットライフを実現するためにあります。私のような後悔をする人を一人でも減らしていきたいという気持ちは、創業以来ブレたことがありません。

小佐々:異変に気付ければ、いち早くアクションを起こせるはずなので、まずは「Buddy Medical Check」をより多くの人に届けていきたいと思います。

ただ、「Buddy Medical Check」が広がるだけでは、ソリューションに広がりがでません。フードを変えてみるとか、生活環境変えてみるとか、そういったソリューションを提供していくことも、後悔のないペットライフには必要不可欠だと思います。

ペットには人間と同様に寿命があり、飼い主より先に寿命をまっとうするケースが大半ですが、「これだけ尽くしてあげられた」という思いが後悔を減らしていくと思いますし、悲しみを癒してくれるはずです。

そんな世界を実現するためにも、まず目の前の課題を一つずつクリアしていきたいと思います。

藤井:創業メンバーだけでなく、一緒に働いているメンバーも、ビジョンに対して熱い想いを持っています。一枚岩のチームで動けていて、結束力はとても強い。

ここにKUSABIという心強いパートナーの力を借りられたら、ビジョンを実現できると確信しています。少しでも興味を持っていただけた方は、ぜひサービスページをチェックしてみてください。

藤井さん、小佐々さん、ありがとうございました!

(取材・文  オバラミツフミ)

 

会社概要

会社名 :株式会社Buddy Cloud
代表者 :代表取締役CEO 藤井 峻
所在地 :東京都中央区日本橋茅場町1丁目8-1
設立: 2023年11月29日
事業内容:LINE上で簡単に利用できる愛犬・愛猫向けの健康管理サービスを提供しています。自宅で行う尿検査や動物病院の血液検査結果をデジタルで管理し、各検査項目の解説も提供します。このサービスを利用することで、ペットの健康状態を手軽にモニタリングでき、体調不良を早期発見し、後悔のないペットライフを実現します。
会社HP :https://www.buddycloud.co.jp/
サービスURL:https://www.buddycloud.co.jp/service

アクセラレーションプログラム 『KUSABI α(アルファ)』3期生Winter Batch 募集中!ご応募お待ちしております!

ウェブサイト:https://kusabi.fund/accelerator
プログラム詳細はNotionをご確認ください。

オンライン説明会開催中!

もっと詳細な内容を聞きたいという方向けに、KUSABI αオンライン説明会を開催しております。
応募は以下フォームからお願いいたします!↓
説明会応募フォーム⇒https://share.hsforms.com/1jkjX3c-QR8KxV4TLCoQxBgq1we6

 

本件に関するお問い合わせ先
Email:contact_alpha@kusabi.fund