【起業家インタビュー】ALTURA X 笹倉栄人さん

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この度KUSABIは、ALTURA X株式会社に追加出資をいたしました。

出資に関する詳細はこちらをご覧ください。https://altura.co.jp/posts/ZMv7RKOA

今回の出資にあたり、ALTURA X株式会社 代表取締役CEO 創業者笹倉栄人(ささくら ひでと)さんへのインタビューをご紹介します。

―事業内容を教えてください

サービスの内容としては、健診PHR(Personal Health Record:個人の健康・医療・介護に関する情報のこと)データ連携プラットフォーム「LIFE LOG × CHECKUP」を展開しています。

医療機関の健康診断業務を行う業務ツールである健診システムに加え、CRM(顧客管理ツール)機能を搭載した仕組み(CHECKUP)を構築し、健康診断業務の効率化を図る。それと同時に、個人向けの健康記録・医療機関予約が行えるアプリケーション(LIFE LOG)で健康診断のデータを個人に帰属させることにチャレンジしています。

皆さん、学生時代や、転職や退職を経験された方は当時の自分の健康診断のデータを持ってないですよね?実は医療情報の中で、個人情報保護法が強く関わってるのが、健康診断データなんです。診療情報であれば病院間で交換できる世の中になってきていますが、健康診断情報は個人を介すか、 企業か健康保険組合からの同意がないと移せません。

個人を介したデータ活用が出来るようになれば、様々な場面で活用できるので、本来であれば、健康診断のデータは個人に帰属させるべきなんです。

個人がデータを持つことによって、例えば海外で病気をした時、企業を転職や退職をした時などでも健康診断のデータを引き継ぐことができる。健康診断後の再検査のときなど、別の医療機関を受診するときに同じ検査をせずに済む。放射線を受ける回数も減り、結果的に社会全体の医療費も下がって、 無駄な医療費を削減できます。ただし、それらを実現するには、日本の医療業界におけるデジタル化の遅れや制度の問題にぶち当たります。

僕らがまず、健康診断にスポットを当て、徹底的に健康診断にまつわる業務の改善と健康診断のデータ活用をしていくことで、健康医療データの流動性を高め、医療業界全体が良くなると考えています。

―起業や事業内容を決めたきっかけは?

僕は医学が大好きないわゆる”オタク”なんですが、身体について追求していった先に、データ利活用の重要性に行きつきました。

10年程前、スポーツトレーナー・セラピストとして国内外でフリーランスとして活動していました。僕が行っていた国には理学療法士やトレーナーという概念がない国が多いので、当時はフリーランスとしてストリートで施術をしたり、エステなどの店舗と提携したり、スポーツチームに入らせてもらって、そこのアスリートや子供たちを見ていました。

東南アジア、中東、東ヨーロッパ、米国などで活動していたとき、日本医療ITと海外の医療ITの差に衝撃を受けました。海外に比べ、日本では健康データが個人に帰属していないことや、文献データや科学系のデータがバラバラに保存されており、一元管理されてないことに違和感を持ったのがきっかけです。

例えばリハビリ、カイロプラクティック、オステオパシー*、マッサージなどを受けた後、良くなる時と良くならない時がありますよね。僕は施術を提供する側だったので、目の前の人を100%良くしたかったんですが、できないことがあった。相手の骨格や関節の角度などがそれぞれ違うので、 結局同じ刺激を入れても同じようには変わらないのです。

ある程度定量化をしていった上で、 その人がどういう状態で、どういったソリューションがベストなのかを当て込んでいく必要があると考えたんです。それをきっかけに、これからは研究データだけでなく、統計学的なデータの活用がマストになってくる、と感じデータサイエンスに興味を持ちはじめました。またその頃、業界の”師匠”たちが、自身のキャリアを進める上でデータサイエンスに舵を切っている姿にも刺激を受けました。

実は、健康診断で受ける「A判定」などの判定基準は医療機関や組合、国ごとに違います。検査機器の元データをしっかりと見ていくことで真の基準がみえるのではないか、というところに着目し、”データの面白み”にはまっていきました。

当時ITのバックグラウンドはありませんでしたが、これからはデータを活用しなければならない時代がやってくる、と思った時に、自分自身も学ばないといけないと強く感じていました。その時にちょうど祖父が亡くなったこともあって、自分自身の死についても考えました。自分の人生を何に使うのか?と考えた際に、本当に世の中を良くしたいという気持ちが強くなったんです。ただ自分1人で目の前の人を良くしても、結果、何も世の中は変わらないとフリーランス時代に感じており、ちゃんと組織を作って取り組んでいこうと、ALTURA Xの前身となる会社を設立しました。

*オステオパシーとは、筋肉や骨、臓器など全体的に捉え、原因を探し出して手技で治療する施術のこと。カイロプラクティック(脊椎指圧療法)と同様にアメリカから導入された。

 

―KUSABI永井との出会いのきっかけを教えてください。

ALTURA Xの前身となる会社の資金調達に動いていた時、知人から「本物の投資家を紹介するから」と、KUSABI GPの永井さんを紹介してもらいました。その時、一発目で永井さんからいただいたフィードバックが圧倒的だった。今の僕じゃ通用しない、みたいな感覚。その時もだいぶ検討していただいたんですけど、結果的に出資は出来ない、となった時に、はっきりと投資が出来ない理由を全部伝えていただけたことが、すごく僕の印象に残っていて。

その後、ALTURA X(クロス)として健康診断のPHRというマーケットで勝負をしていく、というタイミングで、僕から永井さんに再度連絡をしました。

一度話をして内容をアップデートしていき、4回目ぐらいの時にはだいぶ事業内容が磨かれてきた、と本格検討に入ってもらった。2022年末頃、投資実行の3ヶ月前くらいですね。

 

―実際に出資を受けてよかったことはありますか?

お世辞ではなく、投資家に入ってもらって良かったなと思っています。ストレートにフィードバックをもらえるのと、突っ込まれる論点がすごくわかりやすく、自分自身がどんどんクリアにされていっている感覚。永井さんからもらう問いに答えていく度に、いつも自分の能力が上がっていく実感があります。事業を大きくしていくため、今どこに論点を置くべきか、その論点を基にどこにレバレッジをかけながら事業を進めていくのかをインストールしていただけていることに最高に感謝しています。

それから、当然ながら投資家が入ることによって責任の度合いが変わります。家族を持った感覚に近い。自分1人の人生でなくなった、という感覚があって、それを力にできる経営者にとっては出資を受けることは、すごく良いことだと思います。

自分のビジョンや会社のビジョンを、社会全体で見た時にどうか、という話をできる相手は 投資家以外にいないんじゃないかなと思っていて。僕はそういった部分の議論を投資家とできるか、を重要視してたので、本当に最高のパートナーが見つかったと思っています。一緒にビジョンを共有している感覚があるから、何がなんでも達成したい、という糧になっている。永井さんは突くべき論点を突いてくれますし、何より事業に向き合ってくれてんだなと感じます。そういう投資家は、決して多くないと思いますね。

―今後ALTURA Xが目指すことを教えてください。

まずは今提供してるサービスがしっかりと医療業界、健康業界のインフラになること。その先に、起業のきっかけでもある、「個人にデータが帰属している状態」を実現し、個人が健康データを自分で利活用できるようにしていきたい。

そうなることで、例えば、今は健康診断結果を元に病院を検索できる仕組みがありますが、将来的には自分の健康データを元に、健康相談をすることや個人に合った健康食品等の選択をすることが可能になる。我々はそれを実現できると思ってますし、ゆくゆくは日本だけではなく、病院が少ない国や医療機関を受診したくても受け入れられない方々にも届けていきたいなと思ってます。

会社のビジョンとしては、医療業界のデジタル化を進め、医療費を下げること。そして次のステージでは、医療業界にもっとリスクマネーが流れていくような流れを作っていきたいと考えています。まずは医療業界のボトムアップをして、ヒト・データ・カネの流動性を高めていきたい。その取っ掛かりが医療データの活用だと考えています。

 

―今後採用も強化されていくと思いますが、どんな人物を求めていますか?

会社を経営して、事業を大きくしていくことは簡単ではないし、楽しいだけでは成し遂げられません。だからこそ、ビジョンの共有や、仕事を通じてお互いに成長ができている感覚をもてることはすごく重要だと思っています。

僕らは内側に目を向けるのではなく、常に、社会、お客様、投資家などのステークホルダーに目を向けた事業をしていっているので、しっかりと外に目を向けて活躍してもらえるメンバーと事業を成長させていいきたいと思ってます。
「良い会社にしたいか、良い事業を作りたいか」という問いがあったとしたら、我々が目指すのは明らかに「良い事業を創る」です。どれだけ素晴らしい福利厚生をしていても、どれだけフレンドリーな会社を創ったとしても結局、事業として成長しなければ、存続しなければ本当の意味で「顧客」や「メンバー」ひいては、我々のサービス・プロダクトを待ってくれている「社会」を不幸にさせるのではないかと僕は考えているからです。本当にできるかどうかは誰もわからないけれど、背水の陣です。真正面から社会に向き合い、良い事業を創れるチームを目指す割り切った会社方針で進めていきたいと考えています。常に社会に目を向け、顧客に目を向け、ゴールに直結する闘いをし事業を成長していく。役割は違えどフラットに議論し、互いにリスペクトしながら社会課題に挑戦し、解決していく。メンバーには互いに「勝ち」を届け、顧客やステークホルダーには「価値」を届けていく。

そして、1人あたりの売上高が世界No.1の会社になっていくことによって、1人あたりの報酬も世界水準になっていく。そんなチームです。

If we don’t do it, who will?(もし私たちがやらなかったら、誰がやるんだ?)

もしメンバー全員がこんなこと言ってるチームがあったとしたら、なんか強いチームだと思いませんか?規模が小さな仕事、大きなお金が動く仕事、サービスやプロダクトには直接関わらない仕事でも全てが重要です。全てにおいて役割と意志があり、仕事内容は関係ありません。

重要なのは「将来的に何につながる志事だと考えているか?」です。各々がしっかり考えて行動できる方と一緒に、てっぺんを目指していきたいと思っています!

 

―最後に、起業家志望の皆さんへ一言お願いします!

失敗しまくろう、それが一番重要だと思います。そして「それを失敗のままで終わらせない」、というマインドさえあれば、あとは自分に合った事業が見つかったタイミングでうまくいくのではないかと思っています。偉そうに聞こえるかもしれませんが、それぐらいの気持ちでやらないといけないと思っていますし、僕も、今もそれを大切にしたいからこそ、あえて口に出しています。

それから、“先人の知恵”を十二分に活用して、新しい時代を作っていかないといけないと思っています。僕が海外にいた時、日本企業の凄さをとても感じました。先人の人々が世界での信頼を築いてくれたから、自分が海外へ行った時に、見ず知らずの現地の人に「日本がすごく感謝されていた。」今の子供たちの世代にもそう感じてもらえるよう、日本の起業家として一緒に戦っていけたら、と思っています。だからこそ、投資家、起業家、社員問わず、みんなが学んできた先人の知恵をもっともっと吸収して、怖がらずに挑戦しつづける、それが1番重要なんじゃないかなと思いますね。


笹倉さん、ありがとうございました!

【会社概要】

ALTURA X株式会社 https://altura.co.jp/

設立: 2023年1月

事業内容:健診PHRデータ連携プラットフォーム「LIFE LOG × CHECKUP」を提供。クラウド健診業務システム「CHECK UP」と健康記録アプリ「LIFE LOG」により、スマホからいつでも自分の健康情報にアクセスできる医療サービス。「医療&健康に新たな上昇気流(UPDRAFT)を創り出す」をビジョンに、「2032年までに、日本の医療費の無駄を7兆円(17.7%)削減する。」をミッションに掲げる。

サービスURL:https://altura.work/

【採用情報】https://altura.co.jp/recruit-form


KUSABI コミュニティマネージャー リヨウの編集後記

新年度の始まりと共に、健康診断の予約をしている中、ふと前年の健康診断のデータを思い出し、その健康状態を振り返りたいと思っていました。しかし、紙のデータはどこにも見当たりなく、ALTURA Xのサービスのサービスを使えば、自分の健康診断データを手軽に確認できたのに、と感じました。

健康は人生の中で最も大切な資産です。健康診断のデータが個人に帰属し、それを自分で管理できることは、自身の健康状態への理解を深め、今後のケアにつなげることができます。ALTURA Xのサービスがこのようなニーズに応えてくれることを期待しています。

さらに、医学が大好きなオタクの笹倉さんのリーダーシップのもと、必ず優れたプロダクトが生まれると信じています。彼の情熱と専門知識が、良いプロダクトに反映されることを楽しみにしています。


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